厳選特集

丸い姿が可愛らしい だまこ鍋


飾り気なしで素朴だが、だからこそ豊かな自然の恩恵を感じさせる秋田の家庭料理。
なかでも、冬の秋田には鍋が似合う。
芯から体を温めて、大勢でつつけば、なおうまい。
県民に愛される理由がここにある。

家庭でつくる郷土料理


ご飯をつぶして丸めただまこ

だまこ鍋

 秋田の郷土料理といえば・・・?
多くの方に知られていて、秋田を代表する人気料理といえば「きりたんぽ」があげられる。きりたんぽとは、うるち米をつきつぶし、秋田杉を細く削ったものに塗り付けて炭火で焼いたものだ。江戸の後期に、時のお殿様が見回りに来るというので接待の料理に焼むすびの変形として杉の小さい棒の周囲にご飯を塗り付け、いろりに突き立てて焼いて献上したのが始まりと言われている。
それでは、「だまこ鍋」はご存じだろうか?
秋田には、きりたんぽに負けず劣らず美味しくて、家庭でよく食べられている人気のお鍋がある。それが、だまこもちの入っただまこ鍋である。なんと、きりたんぽよりも起源が古いと言われている。

秋田では、子供の遊び道具「お手玉」を「だまこ」と言い、炊きたてのごはんをすり鉢に入れ、すりこぎでほどよくつぶして手のひらで丸めたものがだまこもちとなる。いわば、ごはんの団子であり、お手玉の形に似ていることから「だまこ」の名が付いたとされている。近所のおばぁちゃんたちは「あんまり美味しくて、何も言わずだまって食べるからだまっこだ。」と話していたりもする。子供たちはそんなおばあちゃんのマネをして、一緒にだまこを丸めて作ってみるが、これがまたなかなか上手にできないものなのだ。それでも子供たちにとっては大切な思い出になっているはずである。また、学校給食のメニューにもなるため、このだまこ鍋を楽しみに学校へ行く子供達も多いのではないだろうか。

季節の食材と煮込みにかけた時間が醸し出す味わい

だまこ鍋の魅力は何と言っても手軽に作れることだ。具材やスープ、味付けはきりたんぽと同じで、比内地鶏のだし汁に醤油や味噌などで味を付け、地鶏やネギ、セリ、マイタケ、ゴボウと一緒に煮る。きりたんぽと違い、木の串に巻き付けない分手軽に調理できる。鍋一つでご飯、肉、野菜が取れて栄養満点だ。
日本三大地鶏と言われる比内地鶏は、少々煮すぎても硬くなりにくく、上品な味としっかりとした歯ごたえが特徴である。そのガラを使うと味にコクと広がりが生まれる。主役のだまこは、米の形がうっすら残っており、スープを吸って柔らかいため、モチモチした食感だ。何よりも、通が好むのは2日目のだまこの味で、上質なスープがたっぷりしみ込んでいて、たまらないおいしさなのだ。
地元では年中食べられるが、新米で作るだまこはまた格別で、新米が収穫される時期をみんなが心待ちにしている。子供達と一緒に作るのも食育になるだろう。
秋田の冬は寒いが、みんなで鍋をつっつく幸福なひとときがあれば、体も心も芯まで温まる。だまこ鍋を味わって、秋田の家庭の温かさを感じていただきたい。


旬の食材が鍋に彩りを与えてくれる


野菜も入り鍋の栄養バランスもよい

作り方


1. ご飯を少々硬めに炊き、
すりこぎで突いて半殺しにする。
約5割方突き、
粘り気がでてきたらOK。

-2
2. 桶に水を用意し、
手に水をつけながら
ご飯が熱いうちにだまける。

-3
3. 素早く硬めにだまける。
大きさにもよるが、
だまこは5~6個でご飯3杯分に相当。


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株式会社みどり光学社