厳選特集

鱈(たら)



秋田では「ダダミ鍋」ともいう鱈鍋は、醤油味でも味噌仕立てでもいける。どちらも味の決め手は鱈から出る旨味だ。
新鮮な白子は、鍋の他に刺身やすり身、または湯通しをしてポン酢で食べるのもいい。

  字のとおり、雪の時期の魚で、節分の頃に水揚げされる、いわゆる寒ダラが最も旨いといわれている。秋田県沖では、男鹿や金浦(このうら)が鱈漁の本場だ。
 2月初め、にかほ市金浦町では大漁と無事故を祈って、各船主自慢の大ダラを金浦山神社に奉納する「掛魚(かけよ)まつり」が行われ、熱々の鱈汁が参拝客に格安で振舞われる。この珍しい祭りは300年も前から続いている。
 この時期の鱈鍋、主役はむしろ、鱈の身よりも秋田地方ではダダミと呼ぶ白子の方かもしれない。それくらい、旬の白子は舌にまとわりつくようなまろやかさだ。鍋にたっぷりの湯を沸かし、鱈のアラのぶつ切りを入れて煮立て、エキスを充分に出す。そこに、白菜、春菊、長葱、糸こんにゃく、しいたけ、豆腐、そして鱈の身を入れる。醤油やしょっつるで好みの味に整えたら、最後に白子だ。白子表面のきめ細かな膜がぷちっと口の中ではじけ、とろりとした白子の味がフワッと広がる。そのコクとふくよかな味は病みつきになる。
 鱈の身は淡白で飽きがこない。白子はこってりと濃厚。この、バランス、あとを引く旨さだ。多少濃いめの味が、鱈鍋にはいいようである。

日本海沿岸、にかほ市金浦町の「掛魚まつり」。

協力/
たざわこ芸術村  温泉ゆぽぽ  お食事処「ばっきゃ」 
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