2025年10月3日
木々が少しずつ色づき始めた秋の秋田は、空気がさわやかで、散策するのが気持ちいい季節です。毎回テーマに沿って、秋田市の魅力を探しに旅する「AKITA DEEP DIVE」の第1回目は、秋田駅から徒歩でも行ける「通町商店街」を前・後編に分けて紹介します。秋にちなんで、地元のおいしさを見つけながら、古さと新しさが調和するまちの日常をめぐります。

【江戸時代から続く通町商店街。今も歴史の面影が随所に残る】
秋田市の「通町商店街」は、約400年の歴史を誇る商店街です。旭川が流れる「通町橋」を起点に600メートルほど続く街区には、広い歩道の両脇に約70店舗が立ち並びます。創業100年以上の老舗が多いことから「100年商店街」とも呼ばれ、地域の人たちに親しまれています。


【昔の通町商店街のようす 提供:通町商店街振興組合】
通町は、江戸時代に秋田藩主・佐竹氏のお膝元である久保田城下の商人町として栄えた場所。1629(寛永6)年、佐竹氏の命令により街並みが整備され、1864(文久4)年には市を開くための家督(独占販売権)を認められたことでまちが発展してきたそうです。
商店街では、江戸時代から今に続く「草市」が毎年8月12日に開かれます。この日はお盆のお供え品を求める買い物客たちでにぎわいます。
【通町商店街振興組合 理事長 青井智さん】
【大正4年創業 陶器と珈琲の専門店「器屋 あおい」】
「通町はツウ(通)な方のための町。ぶらっと歩いて、まちの雰囲気を楽しんでください」と話すのは、秋田市通町商店街振興組合理事長の青井智さん。青井さんも今年で創業110周年を迎えた陶器店の5代目です。通町には創業100年を超える老舗や戦後に開店した専門店が20店舗以上あるのだそう。「どのお店も時代に合わせて変化してきたからこそ、今に続いているんしょうね」と青井さん。「最近は新しいお店もどんどん増えて、若い人たちも頑張っているんですよ」。


【10月第2土曜日に開催される「招福狐の行列」提供:通町商店街振興組合】
毎年10月第2土曜日には、人気の恒例行事「招福狐の行列」が開かれます。狐に扮した商店街の人々が、招福稲荷神社から通町の沿道を練り歩いて秋の実りをふるまいます。2025年は10月11日の開催。どなたでも狐のメイクを体験(¥500)して、お祭りに飛び入り参加できますよ!
通町商店街振興組合
https://toorimachi.com/

【創業131年目を迎えた高砂堂。和洋折衷の店舗は国登録有形文化財】
通町橋のたもと、趣ある瓦葺きの佇まいが目をひく「高砂堂」は、1894(明治27)年創業の菓子店です。1918(大正7)年に改築された店舗は、国の有形文化財に登録されています。外観は和風で、店内はレトロモダンな洋風建築。建物を見るだけでも訪れる価値があります。

【大正時代の面影を残す高砂堂店内。エメラルドグリーンの天井が美しい】
その昔、果樹園を営んでいた創業者が、落ちたリンゴを利活用するために羊羹を作り始めたのが高砂堂のルーツ。看板商品は、昭和初期から手づくりされている「りんごもち」です。県産の餅米とリンゴ果汁を使った羽二重もちで、赤ちゃんのほっぺたみたいに柔らかな食感がたまりません。

【高砂堂の「りんごもち」は、皇室に献上された秋田の銘菓】
創業130周年目を迎えた2024年、山形県から本家に嫁いだ塚本明子さんが6代目社長に就任しました。いずれは店を継ぐはずだった夫の健一さんを21年に亡くし、その翌年に先代・清さんの病が見つかったことから、家業を守る覚悟を決めたそうです。菓子作りの経験がない明子さんは、先代と工場に入って学び、大切な「りんごもち」のレシピを受け継ぎました。清さんは、亡くなる2日前まで店に立ち、6代目の独り立ちを見守ったといいます。
「時には新しい感覚も取り入れながら、当店の伝統と価値を守り続けたいです」と明子さん。「通町は千秋公園からも近いので、お休み処としてご利用くださいね」。

【6代目の塚本明子さん。家族の想いを受け継ぎ、事業と製造を担当する】
高砂堂 本店
秋田市保戸野通町2-24
営業時間:平日10時~18時 土曜日・祝祭日10時~17時
定休日:水曜日、日曜日、毎月15日、元旦
http://www.takasagodo.jp/

【大正元年創業の後藤酒店。日本酒ファンが訪れる地酒専門店】
秋田といえば、やっぱり日本酒。「美酒王国」の秋田県には、33の酒蔵があります。
1912(大正元)年創業の「後藤酒店」は、秋田の地酒専門店です。4代目の後藤彰さんが先立ち、今は妻の茂美さんが店主を務めています。彰さんは、お酒そのものを文化と捉え、「本物」にこだわり続けた人だったそうです。

【後藤酒店 4代目店主の後藤茂美さん】
広い店内を囲むショーケースには、日本酒がずらり。後藤酒店では、数ある地酒の中から、造りや味わいに納得できる銘柄をセレクトして販売しています。「約8割のお客様におすすめを聞かれます。旅の会話を楽しみながら、きちんとご案内できるよう心がけています」と茂美さん。おみやげ選びに困った時も、女性の一人旅でも、ここに来れば安心です。

【秋田の地酒の中でも山内流(山内杜氏)の銘柄が充実している】
実は、後藤酒店にはプライベートブランドのお酒があります。彰さんは県内の蔵元とタッグを組み、1987(昭和57)年からオリジナル日本酒の共同開発に取り組んできたそうです。
一番人気の銘柄は、お店の屋号を冠した「まるじゅう」。世界遺産・白神山地の清水を仕込み水に使い、「雪の茅舎」の齋彌酒造店で醸造した希少で贅沢な純米大吟醸です。25年以上変わらぬ味わいのロングセラーで、後藤酒店の店頭のみで購入できます。日本酒ファンには、間違いなく喜ばれる逸品です。

【オリジナルの地酒「まるじゅう」を買えるのは、後藤酒店のみ】
後藤酒店
秋田市保戸野通町2-27
営業時間:10時~19時
定休日:日曜日
https://goto-sake.com/

【稲庭うどんの「無限堂」が秋田市で直営する郷土料理のお店】
「食」を通じてその土地の歴史や文化を体験できるのも、旅の醍醐味。通町商店街ちかくで秋田の郷土料理を楽しむなら「無限堂 大町本店」がおすすめです。
秋田が誇る名産品の「稲庭うどん」は今から360年前、湯沢市の稲庭地区で発祥しました。ここは、産地の稲庭地区でうどんづくりを手がける「無限堂」が秋田市内で直営する飲食店です。ランチに、夕食に、いつでも本場の味を堪能できます。

【吹き抜けで開放感がある無限堂大町本店の店内】
いろんなバリエーションで稲庭うどんを味わえるのは、直営店だからこそ。「無限堂」には、約30種のうどんメニューが揃っています。中でも人気が高いのは、温かい「比内地鶏の無限うどん」。男鹿の天然塩を使ったあっさり仕上げの澄んだお出汁に、歯ごたえのある秋田比内地鶏の旨味が染みわたる、やさしい味わいの看板メニューです。つるりとのど越しのいい稲庭うどん本来のおいしさがぐっと引き立ちます。

【無限堂大町本店の看板メニュー「比内地鶏の無限うどん」】
「無限堂 大町本店」では、稲庭うどんのほかにも、きりたんぽ鍋や比内地鶏の親子丼、秋田牛のサーロインステーキなど、秋田の食材と旬を活かした郷土料理のラインナップが充実しています。商家づくりの落ち着いた店内で、地酒を呑みながらゆったり食事したい時は、夜がおすすめです。お酒のあとの「〆めの稲庭うどん」もお忘れなく。

【お昼は気軽に、夜はゆったり食事を楽しめる】
無限堂 大町本店
秋田市大町1-3-2
営業時間:11時~14時、17時~21時45分(10月から3月は21時30分まで)
定休日:不定休
http://www.mugendo.jp/restaurant/oomachi.html
「通町 100年商店街を歩く」は、後編 に続きます。